彼は背が高く痩せていて、指が長く細かったが、以前マスクをしていた時は、番組の中で特に目立つ選手ではなかった。
しかし前回の写真流出後、自分だと明確に認めなかったものの、外部から容姿が確認され、認定されてしまった。
そのため今では彼の一挙一動が、ファンの目には比類なく格好良く映る。
彼の些細な動きの一つ一つが、大規模な悲鳴を引き起こす。
そして画面の前のファンたちの熱狂も引き起こす。
彼は一つの試合を、自分のコンサートに変えてしまった。
司会者も人気がどこにあるかを知っていて、試合の発表の際、彼と時枝秋に言及する回数は、8対2の差があった。
カメラも彼の長い脚と指に向けられ、かなりのクローズアップが撮られた。
試合が正式に始まった。
石田亮二から歌い始める。
これは彼と時枝秋が試合のために作った曲だ。
二人はそれぞれ5節ずつ歌うことができる。
石田亮二の声は元々柔らかく、今のエンターテインメント界のイケメンのポジションにぴったりだ。
「私と彼女は、地球の果てまで行った
夢のために寝食を忘れて過ごしたこともある
私たちは長い通りの静けさに隠れ
かすかな夢を大切にし
お互いがいる未来だけを約束した
覗き見られた優しさの証拠とされるものは
実は万分の一に過ぎない
誰もいない片隅で
もっと多くのロマンチックな秘密がある」
彼が一節歌うごとに、大きな悲鳴が上がる。
そして弾幕でも彼のために次々とコメントが送られる。
彼はマスクをしているのに、みんなが彼の容姿を想像できるかのようで、そんなにイケメンなお兄さんが自分に向かってこんなに情熱的に歌うなんて、心を動かされないわけがない。
テレビ局の視聴率とネット配信の再生数の増加もそれを証明している。
この見た目重視の時代に、こんなに格好いいアイドルを受け入れたくない人がいるだろうか?
木村裕貴は眉をひそめた。
紺野広幸は腕を組んでいる。
生放送を見ている藤原修は、無表情だった。
彼の目には、時枝秋以外の人は入っていない。
他人が何を歌おうと、彼は気にも留めない。
しかし弾幕で何を話しているのか、一目だけ見た。
たった一目で、万年氷河のように冷たく、人を震え上がらせるような威圧感を放った。
石田亮二が歌い終わり、時枝秋が口を開いた。