時枝秋は再び冷たい表情で注意事項を繰り返した。
「錦、ごめんなさい。次は本当にしないわ」藤原千華は弱々しく約束した。
普段は強気な彼女が珍しく弱気になったため、時枝秋も怒る気が失せ、ただこう言った。「体は自分のものだから、自分で考えなさい」
「うんうん、錦の言う通りよ。気をつけるわ」
藤原千華はステージ上の時枝秋に魅了されたからこそ、昨夜遅くまで起きていられたのだ。
最初は携帯を借りて投票し、その後、安藤誠の不公平さに腹を立てて足踏みした。
そして木村雨音が時枝秋を圧倒したのを見て、思わず皮肉を言ってしまった。
いつの間にか、時枝秋を大切な人として追いかけるようになっていた。
しかし、自分が時枝秋のことを好きだと認めたくなかったため、看護師さえも彼女が誰を好きで、誰に投票しているのか分からなかった。
現実の生活では、彼女は時枝秋を受け入れることができなかった。
だから、現実の時枝秋とステージ上の時枝秋を分けて考えていることは、彼女自身よく分かっていた。
「じゃあ、休んでね。大きな問題がなくて良かったわ。私は行くわ」時枝秋は立ち上がって別れを告げた。
彼女が歩いて出ていくと、藤原修がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。思わず唇を緩めて微笑み、彼の方へ足早に歩いていった。
「どうして一人で来たの?」
「園田秘書から今朝会議があると聞いたから、邪魔しないようにしたの」
藤原修は彼女の手を握り、小声で何か話していた。
藤原千華は赤司先生にプレゼントを買ってきたことを思い出し、追いかけて出てきた。
出てくるなり、藤原修と赤司先生が何かを話し合っている姿が目に入った。
二人は特に親密な仕草はしていなかったが、二人の間に漂う空気感は一目で分かるほど調和が取れており、藤原修の優しさと愛情は一目瞭然だった。
藤原千華は開いた口が塞がらないほど驚き、目の前の光景を見つめていた。
赤司先生はまだしも、問題は藤原修だった。
彼女の記憶では、藤原修は幼い頃から女性に対して「近寄るな」というオーラを放ち、愛想を振りまくことは決してなかった。
家族ぐるみの付き合いがある数少ない家の女の子たちに対しても、家族関係のために仕方なく対応するだけで、親しげな態度とは到底言えなかった。