第192章 ちょっと綺麗

もともと、彼は尾張家の家業を立て直す自信があり、常にそのために努力を重ね、尾張家を昔日の栄光に戻そうとしていた。

しかし残念なことに、ようやく目処が立ってきた頃に足の怪我に足を引っ張られ、大きな夢は泡と消え、その上娘との時間も犠牲にしてしまった。

この失われた数年間は、彼が決して自分を許せないことだった。

堀口碧は静かに言った。「今回帰ってきて、私たちは定戸市に住むつもりだけど、自分たちのことは自分たちで面倒を見るから、秋は自分のことに専念して、私たちのことは心配しないで。」

彼女の言葉には、娘に迷惑をかけたくないという本心が表れていた。

「じゃあ、お父さんの足の怪我について、何か予定は？」

「海外で長い間治療を受けてきたけど、状態を安定させることしかできなくて、歩けるようになるのは基本的に…」堀口碧は軽く首を振り、堀口景介を見て言った。「お兄さんは今外科医だから、準備をして、お父さんの手術をやり直すつもりよ。」

堀口景介は今では名が通り、多くの複雑な手術を成功させ、高い評価を得ていた。

しかし、彼はずっと父親の手術に踏み切れずにいた。一つには尾張靖浩の怪我が古すぎて、何度も手術を受けており、古傷は新しい怪我より処置が難しかったからだ。

もう一つは、患者が最も身近な人であるため、医師としてかえって臆病になってしまうからだった。

これらのことは、時枝秋も実は全て知っていた。

彼女は口を開いた。「手術の時は私に知らせて。お兄さんを手伝って、一緒に手術をするわ。」

手術は誰でも手伝えるものではない。

しかし時枝秋がそう言ってくれたことに、尾張靖浩と堀口碧は非常に感動した。娘は本当に大人になり、思いやりを持つようになったのだ。

手伝えるかどうかは二の次で、大事なのは彼女がそういう気持ちを持っているということだった。

「お母さん、お父さんとお兄さんは、ゆっくり休んでね。また数日後に会いに来るわ。」時枝秋の彼らに対する態度は、とても親しみやすいものだった。

彼らの印象では、これまで時枝秋とちゃんと過ごす時間がなく、申し訳なさを感じていた。

しかし時枝秋の記憶の中では、彼らの彼女に対する献身は、本当に計り知れないものだった。

彼女と藤原修はすぐに立ち去り、尾張家の三人は安堵の表情を浮かべた。