江頭瑞希も口を尖らせて言った。「どうして尾張家に帰らないのかしら?毎日ここで嫌われ者になって、本当に自覚が全くないわね!」
「まあいいわ。どう言っても、私の両親と祖父とは12年の縁があるのよ。それは消せない事実だわ。」時枝雪穂は寛容に言った。
「雪穂、あなたは馬鹿よ。彼女に優しすぎるから、隙を与えてしまうの。今はマネージャーと事務所もついているから、きっとますます手放したくなくなるわよ。」江頭瑞希は言った。
時枝雪穂は手のひらを握りしめた。そうね、彼女もそれを心配していた。でも、時枝秋はそこにはっきりと存在していて、喉に刺さった魚の骨のように気になるが、直接どうすることもできなかった。
学校記念祭が始まった。
江頭瑞希は今回の司会者の一人で、衣装替えのため先に行かなければならず、時枝雪穂に言った。「先に行くわ。後でのステージ、楽しみにしているわ。」
時枝雪穂は頷き、大島潔子は笑って言った。「今夜はバイオリンの演奏よね?」
「うん。」時枝雪穂は答えた。先ほど時枝秋にコンクールで失敗したことを暴露されて、少し不安になっていた。
でも考え直してみれば、コンクールでの失敗は誰にでもあることだ。人は失敗しないわけがない。
たとえ自分が時々つまずくことがあっても、バイオリンの技術に関しては、第二中学校全体や自分の通うH大学でも、自分と比べられる人はいないはずだ。
大島潔子も期待に満ちた表情で言った。「ああ、やっと生で演奏を見られるわ!もう随分と舞台に立つのを見てないわ!前回の舞台は少年バイオリンコンクールで優勝した時よね。後で応援するわよ!」
時枝雪穂はさらに勇気づけられた。
学校記念祭が始まった。
第二中学校は人材の宝庫で、受験を控えた中三と高三以外の各クラスが出し物を披露し、どの出し物もしっかりとしていて、レベルが高かった。
今回、応援に来た卒業生の中には各界の精鋭も多く、記念祭の夜会は決して退屈なものではなかった。
すぐにプログラムのフィナーレとなり、トリを務める出し物の出番となった。