藤原修の骨ばった長い指が布団を掴み、瞳の奥には激しい波が渦巻いていた。
彼は思った。
でも、できない。
そして、怖かった。
あの時の彼女の拒絶と涙を思い出すたびに、彼の心は激しく震えた。
嫌われるのが怖かった。
去られるのが心配だった。
彼は再び理性と感情の葛藤に陥った。彼女を失うどんな可能性も耐えられなかった。
そんな中、向かい側の時枝秋は何も気付かず、ライトを消して、低い声で言った:「寝ましょう。」
彼女は藤原修が数日間ろくに眠れていないことを知っていた。ヤオランのエッセンスで神経を癒すことはできても、彼の心の病は一向に良くならなかった。
時枝秋がいれば、彼は安らかに眠れる。
暗闇の中では、目が見えないぶん、他の感覚がより一層鋭敏になる。
時枝秋は藤原修の腕が自分の腰に回されるのを感じた。その後は一切動かなかった。