季山梨香は突然何かを思い出したかのように、制御不能に叫び出した。「だから、なぜ定戸市漢方医科大学を受験しようと思ったの?あなたの成績なら、どんな学校でも自由に選べるはずよ!」
「好きだからよ」
時枝秋は前世で、身近な大切な人たちが様々な病気や怪我で苦しむのを見てきた。そして、藤原修が彼女の腕の中で息を引き取る出来事も経験していた。
だからこそ、彼女の心にはそのような執念があった。
もう一度人生をやり直して、すべてを変えたかった。
しかし、現在持っている医術だけでは、まだ足りないと不安だった。
だから、まだまだ学ぶことが多かった。
「他の選択肢も考えてみない?より良い大学なら、将来の人生がもっと楽になるわよ」
「もう決めたの」
季山梨香は落ち着いて言った。「あなたが好きなものを見つけて、それを追い求めようとする姿勢は素晴らしいわ。自分の望む方法で生きていこうとする。あなたの能力なら、世間が言う最高の学校に行かなくても、素晴らしい人生を送れると信じているわ」
時枝秋がこれほど透徹した考えを持っていることに、季山梨香は敬意を覚えた。
芸能界というような華やかな世界にいながら、初心を保ち続けているのは、本当に稀有な子どもだった。
そう言って、彼女はさらに尋ねた。「この件について、六田学長はまだ知らないでしょう?」
「まだ話していません」
「わかったわ。六田学長と学校側のことは私に任せて!」季山梨香は言った。「あなたは自分のやるべきことに専念して」
時枝秋は静かに言った。「ありがとうございます、季山先生」
彼女は自分の選択が学校にどれほどの衝撃を与えるか、よく分かっていた。
どの学校も、トップレベルの大学に合格する学生を多く輩出したいと願っているのだ。
特に第二中学校と第一中学校の競争が激しい状況下では、トップレベルの大学に合格する学生一人一人が、相手校と戦うための強力な武器となる。
清加大学や定戸市大学に合格する生徒が多ければ多いほど、翌年の学校運営もそれだけ楽になる。
季山梨香がすぐに時枝秋を理解し、その意思を尊重してくれたのは本当に貴重なことで、彼女が六田学長を説得するのにどれほどの労力が必要になるかは想像もつかなかった。
季山梨香に出会えたことは、この時期の時枝秋の学業における最大の幸運だった。