第290章 彼女が最も大切にする人

広告のために特別に制作されたこの番組は、多額の費用をかけたにもかかわらず、ライバル企業のための素晴らしい宣伝になってしまった。

斎藤心美は、上層部の前で満面の笑みを浮かべ、颯爽と歩いていた。

上層部は今、腸が青くなるほど後悔していた。今回の広告の成功は会社に巨大な利益をもたらし、目に見えない信用は他の何物にも代えがたいものだった。

そして彼らは以前、この美味しい話を自ら手放してしまった。

会社が発展すれば彼らにも利益はあるが、やはり今回の利益に直接関われなかったことは、非常に悔やまれた。

最も後悔しているのは、最近宿題ヘルパーに転職した唐沢勇だろう。

しかし、世界は敗者の気持ちを理解しようとはしない。

その夜、時枝秋もストロベリーミュージックフェスティバルでの歌唱を終えた。