第307章 あれは祝園さんじゃないか?

「小林お兄さんと蕾さん、ありがとうございます」と時枝雪穂は笑顔で言った。「一緒に中へ入りませんか?」

横澤蕾が言った。「ちょっと待って。小林がまだサプライズを用意してるのよ。今日は雪穂の誕生日だから、まずはそれを見てからにしましょう」

「何なんですか?」

「まず、あなたにバイオリンの巨匠を紹介したいの」と横澤蕾は言った。「これは小林が前回の撮影の時に偶然知り合った巨匠なの。二人はすぐに忘年の交わりを結んで、小林があなたの演奏を見せたら、巨匠はとても良いと思って、もし縁があれば弟子にしたいって」

「本当ですか!すごい!小林お兄さん、ありがとうございます!」時枝雪穂は興奮のあまり声が変わった。

小林凌は愛情を込めて彼女を見つめながら「雪穂が好きなバイオリン、私がこれをするのは当然だよ」

「小林お兄さんは私のためにたくさんしてくれて」と時枝雪穂は言った。「どの巨匠なんでしょうか?」

「文岩望だよ」

「えっ、文岩望先生!国内最高峰のバイオリニストで、とても有名な方です。本当に幸せです!」

「巨匠が来られました!」と横澤蕾が注意を促した。

白髪の老人が気品高く近づいてきて、横澤蕾は急いで出迎えた。「文岩師匠!」

「小林君、横澤さん」と文岩望は親しみやすく言った。「こちらが今日の主役かな?」

「はい、雪穂、文岩師匠にご挨拶を」

時枝雪穂は急いで手を差し出した。「文岩師匠、はじめまして!」

「雪穂さん、小林君からよく話を聞いていましたが、今日お会いして、本当に美しい方ですね」と文岩望は爽やかに笑った。

「お褒めの言葉、恐縮です。私の誕生日パーティーにお越しいただき、本当にありがとうございます。至らぬ点がございましたら、どうかご容赦ください」

双方が挨拶を交わしていた。

階下では、尾張靖浩と堀口碧が尾張お爺さんと彼の古い友人を出迎え、一緒に向かっていた。

車から降りた後、尾張靖浩は駐車しに行くと言って「碧、先に父と祝園伯父さんを上に案内して」

「はい」と堀口碧は笑顔で答えた。「お父様、祝園伯父さん、こちらです」