第322章 私はあなただけを守りたい

時枝秋は彼が刃山火海も厭わない様子を見て、思わず笑みを浮かべた。「以前、日本舞踊協会で、私が知っている『商朝舞踊』という曲を皆さんに練習用に提供することを約束したの。今は舞踊の形は整ってきたけど、舞踊に合わせる衣装がまだ目処が立っていないの。

多くのデザイナーと相談したけど、私の要望通りに作るのは難しすぎると皆さん言うの。

生地や技術への要求が特別に高くて、私が望む効果を実現できないって。

でも、このような衣装なしではこの舞踊は成り立たないの。形だけ似ていても本質を表現できないわ。」

「いいね。この挑戦が好きだ」堀口正章はすぐに承諾した。

「でも、お兄さんの予約は来年まで埋まってると聞いたけど?」

堀口正章は細長い目を上げ、妖艶な雰囲気を漂わせながら「他の人なら、調整できる」と言った。

「じゃあ、お兄さんありがとう」

「君が手伝わせてくれて嬉しいよ。帰国前は、僕を兄として見てくれないんじゃないかって心配してたんだ。そうだ、誕生日プレゼント」堀口正章は物を渡した。

時枝秋はそれを受け取り、お礼を言ってバッグに入れた。

堀口正章は個室を出ると、すぐにアシスタントに電話をかけた。「小林凌と時枝秋の件を調べてくれ」

しばらくして、アシスタントから詳細な資料が送られてきた。

「このクソ野郎!」堀口正章は携帯を握りしめ、妖艶だった目尻が険しくなった。「私の服を彼に渡すな!」

帰国前は、時枝秋がまだ小林凌に未練があると思っていた。

だから小林凌が所属する秀麗エンターテイメントから、小林凌のためにドレスをデザインしてほしいと依頼された時、堀口正章は躊躇なく承諾した。

しかし、小林凌が時枝秋にそんな仕打ちをしたのなら、もう必要ない。

「ブライアン、衣装はもう渡してしまいました」

堀口正章の衣装はすでに完成していて、元々小林凌に渡すつもりで、時枝秋と小林凌の再会の贈り物のつもりだった。

状況が変わったことは予想外で、アシスタントはすでに衣装を届けてしまっていた。

「取り返せ!」堀口正章は躊躇なく命じた。

アシスタントはすぐに応じた。

小林凌の方では、横澤蕾との最終確認を待っていた。