監督と副監督が話し合いを交わした。
そして監督は龍崎雄に言った。「葉山先生はいいと思うんだが、もし可能なら……」
龍崎雄は言った。「彼女と相談してみます。」
監督は頷いた。確かに葉山彩未の演技は黄瀬桂子には及ばないものの。
しかし、この役との相性の良さと台詞回しは貴重だった。この部分は黄瀬桂子でさえ上手くいかなかった。彼女は長年演技をしてきて、最も省エネな演技の仕方を知っているが、演技力があっても時には古株という印象を与え、没入感が足りない。
葉山彩未は全身全霊で演技に取り組み、感情の豊かさは自ずと異なっていた。
葉山彩未は先ほども勢いで演技をしたが、龍崎雄が近づいてくるのを見て、声に緊張が混じった。「龍崎プロデューサー、私の演技は……?」
「葉山先生、マネージャーはいらっしゃいますか?詳しく話し合いたいのですが。」
「定戸市にいます。すぐに電話します!」葉山彩未はすぐに答えた。
電話を終えると、時枝秋のところへ行き、時枝秋は笑顔で言った。「葉山先生、おめでとうございます。」
「時枝さん、あなたに会うといつも幸運が訪れるんです。」
「幸運とは、準備のできた人に与えられる機会の恩恵なのです。」
葉山彩未は彼女の言葉を聞いて、ますます心が和んだ。「仕事が決まったら、必ずまたご飯に誘わせてください。」
時枝秋は笑い、優しい声で答えた。「はい、いいですよ。」
龍崎雄は、葉山彩未のマネージャーとすぐに会うことができた。
前回主題歌を決めた時に既に会っていたので、お互いをある程度理解していた。
今回の仕事も迅速かつスムーズに話がまとまった。
マネージャーは謙虚に言った。「葉山は確かに撮影経験が歌手活動ほど豊富ではありませんので、龍崎プロデューサーと監督には、ご指導ご鞭撻をお願いいたします。葉山も向上心が強く、時間をかけて磨いていく覚悟があります。」
葉山彩未は業界に復帰して仕事を得ることが容易ではなかったため、常にこのような姿勢でチームに臨むよう求めていた。
マネージャーも当然、彼女の姿勢を自分の仕事に反映させていた。
話がまとまった後、龍崎雄はすぐに葉山彩未の起用を発表し、衣装合わせ写真も公開された。
この件は、当然ファンの間で議論を呼んだ。
葉山彩未の衣装合わせ写真が黄瀬桂子よりも美しく撮れていたことは、世間の予想外だった。