横澤蕾は先手を打って、時枝雪穂のすべての創作曲を録音しようとしていた。彼女が受賞した際に、一斉にリリースできるようにするためだ。
今回は、デジタル版だけでなく、ファン向けのコレクション用として20万枚の限定アナログレコードも制作することになっていた。
そして、時枝雪穂が受賞した後、小林凌も彼女との交際を公表する予定で、その時には、この記念盤は間違いなく品薄になるだろう。
時枝雪穂は横澤蕾を見つめて言った。「蕾さん、お願いします。」
まずは録音さえすれば、あとは自然と物事が進んでいくはずだった。
時枝秋がその時になって形勢を逆転させようとしても、それは不可能なことだった。
時枝雪穂がワルシャワに到着するや否や、横澤蕾は会社の承認を得て、彼女のピアノオリジナル曲のアルバム制作を開始した。
配信中の彼女の主な仕事は、楽譜の修正、練習、そして録音だった。
配信を見ているファンたちは彼女の姿に感動し、魅了された。「雪穂は本当に頑張り屋さんね。学業優秀なだけじゃなく、作曲も録音も本当に一生懸命。」
「もう、この記念盤が欲しくてたまらないわ。」
「私も欲しい。才女って呼ばれるのにふさわしいわね。」
「芸能界で注目を集めようとしながら自己アピールもする他のタレントと比べて、ずっと素晴らしいわ。」
「そうよね、同じ家庭で育ったのに、どうしてこんなに大きな違いが出るのかしら。」
「やっぱり雪穂は優しくて努力家で、私たちの手本になるわ。」
配信が進むにつれて、彼女のファン数も増え続けていった。
横澤蕾も、他の女性タレントとは全く異なるアーティストイメージを作り上げようとしていた。彼女の上品さ、優しさ、才能を強調し、平凡な他の女性タレントと比較させることに力を入れていた。
それによって、小林凌のファンたちからの支持と承認をより早く得ることができるはずだった。
一方、時枝秋も出発の飛行機に搭乗した。
今回は、藤原修は同行せず、木村裕貴と陸田だけが同行した。
組織委員会が配信を予定していたため、時枝秋は藤原修の別荘には滞在しないことにした——あの家は、あまりにも目立ちすぎていた。
配信で映し出されたら、どんな大騒ぎになるか分からなかった。