横澤蕾は先手を打って、時枝雪穂のすべての創作曲を録音しようとしていた。彼女が受賞した際に、一斉にリリースできるようにするためだ。
今回は、デジタル版だけでなく、ファン向けのコレクション用として20万枚の限定アナログレコードも制作することになっていた。
そして、時枝雪穂が受賞した後、小林凌も彼女との交際を公表する予定で、その時には、この記念盤は間違いなく品薄になるだろう。
時枝雪穂は横澤蕾を見つめて言った。「蕾さん、お願いします。」
まずは録音さえすれば、あとは自然と物事が進んでいくはずだった。
時枝秋がその時になって形勢を逆転させようとしても、それは不可能なことだった。
時枝雪穂がワルシャワに到着するや否や、横澤蕾は会社の承認を得て、彼女のピアノオリジナル曲のアルバム制作を開始した。