「それなら良いわ。どんなデザインがいい?」
「覚えてるけど、私の友達は古典的な伝統的なスタイルが好きなの」時枝秋は藤原千華の前世のこの年を思い出した。祝典や装飾はすべてS国の古典的な伝統を採用していたので、きっと服もそのスタイルだったはずだ。「華やかで、美しくて、素敵なものがいいわ」
「お前の二番目の兄貴がデザインした服が、いつ華やかさや美しさ、素敵さに欠けたことがあるんだ?」
「わかったわ、お兄ちゃんは最高」
「お前はいつも甘い言葉を言うな。いいよ、そのうちサイズを教えてくれれば、できるだけ早く作るから」
時枝秋はすぐに藤原千華のサイズを伝えた。
前世で藤原千華のことをよく知っていたのだから当然だ。当時は彼女を完全に敵として理解していた。
敵を知り己を知れば百戦危うからずというわけだ。
「これは友達?それとも彼女?」堀口正章は「彼女」という言葉に重点を置いた。「なんだか随分と気にかけているみたいだね?サイズまで知ってるなんて」
「もちろん彼女よ。彼女じゃなかったら、あなたにドレスを作ってもらうわけないでしょ?」
堀口正章は時枝秋に言い返せなかった。「まあいいや、また後で連絡するよ」
時枝秋は電話を切った。彼女は覚えていた。かつて藤原千華と秦野伸年の関係が徐々に悪化し始めたのは、この結婚記念日からだった。あの時、藤原千華の精神状態はすでにかなり悪かった。
彼らの関係が冷え始めた後、秦野伸年は常に努力していたが、それでも効果はなかった。
ここまで考えて、時枝秋は自分が完全に見過ごすわけにはいかないと悟った。たとえ藤原千華の手の怪我が問題なくなったとしても、彼らが本当に幸せになるのを見届けなければ、安心できないだろう。
そう思うと、彼女はすぐに藤原千華に電話をかけた。
「ちょうど家で結婚記念日の準備をしていたところよ。あっという間に結婚して10年になるわね」藤原千華の声には笑みがあふれていた。「見に来ない?」
「いいわよ」時枝秋はすぐに承諾した。
「忙しくないの?」藤原千華は尋ねた。
「今日はちょうど忙しいことが終わったところ。じゃあ、直接行くわね?」
「住所を送るわ」
時枝秋は電話を切ると、すぐに藤原千華から送られてきた住所を受け取った。
彼女は自分で車を運転し、秦野家へと向かった。