時枝秋は前回藤原家で藤原千華を見たとき、彼女が目を赤くしていた様子を思い出し、胸が痛んだ。
あの時、彼女は藤原おばあさんに子供を産むよう急かされていたのだろう。何も言えず、弱さを見せてしまったのだろう。
世間の人々が見ている藤原千華の奔放さ、自由さ、姉御肌の裏には、数え切れないほどのプレッシャーを抱えていたのだ。
時枝秋は決意した。必ず藤原千華の体調を整えてあげよう。
さっき彼女の脈を診たが、藤原千華の体調は確かに大きな問題を抱えていた。
時枝秋も少し時間をかけて、彼女に合った薬を探す必要があった。
ただ、この件は急がず、特に彼女の体は長年の疲れが溜まっているので、ゆっくりと方法を考えなければならない。
蘭亭花序に戻ると、彼女はすぐに裏庭に向かった。
今ではそこにはますます多くの種類の漢方薬が育っていた。
彼女はそこにしゃがみ込み、長い時間を過ごした。
藤原修が帰ってきたとき、靴箱に彼女が脱いだ靴を見つけたが、彼女の姿は見えなかった。
大島執事は急いで言った。「藤原様、時枝さんは庭で花を見ていらっしゃいます」
藤原修はうなずき、靴を履き替えて外に出た。
遠くから、彼女がしゃがみ込んで、一本の薬草を鼻先に持っていき、匂いを嗅いでいるのが見えた。
時枝秋は匂いを嗅ぎながら、誰かが近づいてくるのを感じた。見なくても藤原修だとわかり、彼女は手を伸ばした。「ちょっと手を貸して、足がしびれちゃった」
藤原修はすぐに彼女を助け起こした。時枝秋の足は本当にしびれていて、彼の胸に寄りかかった。
藤原修は彼女をしっかりと受け止め、腰に手を回して抱き上げ、近くのベンチに座らせた。
彼は彼女の足を取り、靴を脱がせ、ゆっくりとマッサージした。「しびれるとわかっていながら、そんなに長くいたのか?」
「ある処方を考えていたら、少し長居してしまったの」
「また何か患者に会ったのか?」
「特に患者がいるわけじゃないわ、ただ考えていただけ」藤原千華の秘密を守るため、時枝秋は軽々しく漏らすことはなかった。
藤原修はマッサージの力を少し強めた。「他人のことで、そんなに抱え込んで、疲れないのか?」
「医は仁術なりよ」時枝秋は笑った。「それに、他人が良くなっていくのを見るのは、達成感でいっぱいになるの。特にその人があなたが大切にしている人なら、幸福感も大きいわ」