時枝お爺さんは体がまだ丈夫で、時枝秋の薬の世話もあり、今は病院に入院する必要もなくなった。
時枝秋を見ると、彼の顔には喜びの光が浮かんでいた。
「どうしてこんなに痩せたんだ?」時枝お爺さんは彼女がマスクを外すのを見て、思わず不満げに言った。
木村裕貴は傍らで冤罪を訴えた。「私は本当に時枝秋の食事を制限していませんよ」
以前は彼女に火鍋やコーラを飲むことを許さなかったが、後に藤原修に説得され、木村裕貴は今では見て見ぬふりをするようになった。
「早く、私のところにはまだ美味しいものがあるから、誰かに厨房から持ってきてもらいなさい」
すぐに、たくさんの食べ物が時枝秋の前に並べられた。
療養院は病院とは違い、時枝お爺さんには自分の厨房があり、食事や衣服などの必需品も便利になり、家にいるのと同じだった。
時枝秋は断りきれず、座って彼と一緒に少し食べた。
食事中、看護師が時枝お爺さんのそばに来て言った。「お爺様、お嬢様がいらっしゃいました」
「帰らせなさい」時枝お爺さんの表情が曇った。
看護師がまだ何か言おうとしたが、時枝お爺さんは箸を置いたので、看護師はひとまず退出するしかなかった。
時枝秋は少し不思議に思った。普段、時枝お爺さんは時枝雪穂に対してまあまあ良い態度だったし、不満があっても過度に表現することはなかった。これはどうしたことだろう?
「お爺さん、怒らないで、お茶をどうぞ」時枝秋はお爺さんが気を悪くするのを見たくなかった。
「ああ、ありがとう」時枝お爺さんはお茶を受け取った。「時枝秋、やはりお前はいつも頼もしい。不愉快なことは話さないでおこう。お前が元気でいるのを見るだけで、爺さんは満足だよ」
時枝秋は結局、何があったのか聞かなかった。
出てくるとき、彼女は服を整え、外を見ると、時枝雪穂が車に乗って去っていくのが見えた。
木村裕貴が傍らで小声で言った。「時枝雪穂のほうは、金持ちで権力のある大物と付き合っているらしい。50代のような人だ」
時枝秋は心の中で納得した。だから時枝お爺さんがあんなに怒っていたのだ。以前は時枝雪穂に会うことを許していたのに、今は会うことさえ拒否している。