園田悦は心の中で悲しみを感じ、役を逃した悲しみが彼女を飲み込んだ。
彼女はもともと時枝秋が自分の力で役を手に入れたと思っていたが、今見ると、全くそうではなかった。
時枝秋の隣にいるこの男性は、おそらく彼女のスポンサーで、さらには外国人かもしれない?
このような方法で自分の役を奪うなんて、時枝秋は少しも恥ずかしいと思わないのだろうか?
しかし園田悦が写真を撮る前に、時枝秋の姿はすでに角の方向に消えていた。
「あっちはどこに通じているの?」園田悦は友人に尋ねた。
「あっちのことかい?あっちは楽屋で、日本代表チームの選手に会えるよ」友人は説明した。「残念ながら、一般人は入れないんだ」
園田悦は頭を上げて、そこに「関係者以外立入禁止」と書かれた看板を見た。
他の人は入れないのに、時枝秋は入れるの?
堀口正章は時枝秋に付き添って中に入った。
日本代表チームのメンバーは、最後の準備とウォーミングアップを行っていた。
「先輩!」誰かが堀口正章を認め、熱心に挨拶した。
フィギュアスケートの選手たちはみな非常に若く、14、15歳の少年少女も少なくなく、最年長でも20代だった。
堀口正章は引退して数年経っていたが、かつてのコーチとの関係が非常に良好で、時々戻ってきては様子を見ていた。また、毎年フィギュアスケートの衣装をスポンサーしていたため、みんなとは馴染みがあった。
時枝秋はこのグループと彼らの仕事環境に触れるのは初めてで、非常に興味を持っていた。
堀口正章はヘッドコーチとみんなに紹介した。「こちらは私の妹の時枝秋と友人です」
「わあ!」数人の少女たちはすぐに顔を輝かせ、時枝秋に星のような目を向けた。
彼女たちは皆、時枝秋のファンで、ここで彼女に会えるとは思ってもみなかった。
「時枝秋さん、一緒に写真を撮ってサインをもらえますか?」
「もちろんいいわよ!」時枝秋はすぐに同意した。
その中の一人の少女は、特に明るい目を持っていて、とても輝いていた。「時枝秋さん、もし私が今回優勝したら、お祝いの言葉を書いてもらえますか?」
「もちろんよ、今すぐでも書けるわ」
「うん、今は必要ないの。優勝してから書いてほしいの。そうすれば、これからステージに上がるとき、それを励みにできるから」