「時枝秋が来るって……時枝秋が本当に来たの?」監督がその方向を見ると、今度ははっきりと見えた。観客の群れの中に、特に目立つ姿が、おぼろげに現れていた。
本当に時枝秋だ!
周りの人々より頭一つ分背が高く、手のひらほどの冷たい白い肌の顔は、特に見分けやすかった。
「くそ!何をぼんやりしてるんだ?カメラはどこだ?あっちにカメラはあるのか?」
時枝秋の到着で、現場はしばらく騒然となってから静かになった。
斎藤玲が時枝秋の側に歩み寄ると、彼女が皆と同じスポーツウェアに着替えていることに気づいた。
ごく普通のスポーツウェアが彼女の体にぴったりとフィットし、特にスタイルを際立たせていた。
皆が思わず立ち上がった。
これで本当に信じることができた。
水野羽衣は心ここにあらずといった様子で、ふらふらと立ち上がった。
監督は急いで駆け寄った。「時枝秋さん、私たちの番組へようこそ!」
今回は、斎藤玲を本当に見直した。静かに何も言わずに、本当に時枝秋を招くことができたのだから。
「今は射撃の試合ですよね?」時枝秋が尋ねた。
彼女が話し始めると、実生活での声はCDで聞くよりも美しく、余韻が残る甘さを感じさせた。
「はい。今日はチーム対抗戦で、二つのグループに分かれて競います。負けたチームは罰ゲームを受け、最も成績の悪い個人は脱落して、補欠選手と交代する可能性もあります。」
「私は斎藤玲の友人なので、斎藤玲と同じチームでいいですね。」時枝秋が言った。
監督は異議なかった。
斎藤玲の現在のチームには、彼女の他に橋本幸がおり、他の数人と共に、キャプテンは久保田天音だった。
もう一方のチームは、水野羽衣がキャプテンで、両チームとも男女混合で、力は均衡していた。
しかし監督が以前に計画した方法では、毎回勝者は必ず水野羽衣のチームになるはずだった。
彼らの予定では、水野羽衣自身が意図的に久保田天音に負け、自分が罰ゲームを受けるというものだった。結局のところ、目的はテレビ視聴者に甘い恋愛シーンを見せることだった。
しかし今、突然時枝秋という変数が加わり、監督と副監督は相談する必要があった。
監督は言った。「もし時枝秋の能力がそれほどでもなければ、私たちは元の計画通りに撮影します。」
「でももし時枝秋の射撃技術が高かったら?」