「うん、それでいいよ。今、精度が落ちているのは、急に力の入れ方を変えたことによる不慣れからだよ。この姿勢と体勢を維持し続ければ、すぐにまた精度が上がってくるわ」
「もう一度見本を見せてくれない?」斎藤玲は弓矢を彼女に渡した。
時枝秋はそれを受け取り、さっと持ち上げた。「見て、こうすれば長期的に筋肉の記憶が形成されて、むしろ精度が上がるの」
彼女は矢を取り、非常に素早く綺麗な動作で射った。
その姿があまりにもかっこよくて、斎藤玲は目を見張った。
彼女の矢が放たれると、すぐに音楽が鳴り響いた。「10点、10点、10点!」
普段の練習や試合では審判が点数を呼び上げるが、10点を射ると同時に音楽が鳴って知らせるようになっていた。
斎藤玲はワッと声を上げ、時枝秋が再び素早く二本の矢を続けて放つのを見ていた。
「10点、10点、10点」音楽はますます澄んで陽気に鳴り響いた。
他のタレントたちも練習中だったが、こちらの音を聞いて、思わずこちらに集まってきた。
「斎藤玲、あなた?」誰かが尋ねた。
「私じゃないよ、私じゃなくて、時枝秋だよ」斎藤玲は誇らしげな表情を浮かべた。
「時枝秋か、時枝秋すごいね!」
「かっこいい!」
水野羽衣は何も言わず、最初から予想通りという表情をしていた。
ディレクターが歩み寄り、首を振りながら言った。「時枝秋、それはフェアじゃないよ。練習でこんなに上手なのに、本番ではなぜ全力を出さないの?」
「ディレクター、私はただたまたまうまくいっただけです」
「ダメだよ、これから本番に出たら、真剣にやらなきゃ。この番組は嘘をつく番組じゃないんだから」
「そうよ、時枝秋、そんなのは私たちを見下してるみたいじゃない?こんなに上手なのに、わざと手加減するなんて意味ないでしょ?お願い!」久保田天音は彼女の袖を引っ張って甘えた。
「時枝秋、本気でやろう」水野羽衣も一言添えた。
他の人たちもあれこれと口々に言い始めた。
「わかった」時枝秋は答えた。
みんなが本番の収録の準備をする中、斎藤玲は我慢できずに尋ねた。「時枝秋、こんなにすごい能力があるのに、なぜ見せないの?他の人は持っていないものまで自慢して、持っているものは何百倍も大げさに言うのに、あなたはなぜ隠すの?」
「番組が面白くなくなるのが怖かったの」