市立第一病院
西尾聡雄が自ら執刀医として原幸治の手術を行うことになり、院長はそれを聞いて軽視できず、すぐにVIP手術室の準備を指示した。
西尾聡雄が白衣に着替えて手術室の外で真剣に資料を見ているとき、青木岑は遠くから彼を見て、その姿に魅了されていることに気づいた。
目の前のすべてが現実だとは信じられなかった……
いつか彼が医師として手術室の前に立つ姿を見られるなんて。照明が彼の端正な顔を照らし、そのなじみ深いシルエット、かつて深く愛していたこの男性が、そこにいる、それはあまりにも現実的だった。
彼女はゆっくりと近づいていき、足音は静かだったが、それでも西尾聡雄の注意を引いてしまった。
彼が顔を上げて青木岑を見た瞬間、その眼差しは柔らかくなった……
「私も手術の助手として入らせてください」
「必要ないよ。外で待っていてくれ」
「入らせてください。前回のあんな重要な手術でも入れたじゃないですか。今回も大丈夫です、気をつけますから」青木岑は我儘に言った。
西尾聡雄は彼女を数秒見つめ、ゆっくりと言った。「今回は違う。彼は君の弟だ。集中できないかもしれない」
「でも……」青木岑はまだ諦めきれない様子で、何か言おうとした。
すると西尾聡雄が彼女に言った。「私を信じているか?」
青木岑はその言葉に少し驚いた……
「信じているなら、任せてくれ」
数秒の沈黙の後、青木岑は小さく頷いた……
「西尾博士、手術の準備が整いました」補助の執刀医がドアを開けて告げた。
西尾聡雄は白衣のポケットからマスクを取り出してゆっくりと付け、そのまま部屋に入っていった。
その瞬間、青木岑は彼が世界で最もかっこいい男性だと感じた……
青木岑は手術室の外で待っていたが、心配で落ち着かなかった。一時間半が経過したが、中からは何の音も聞こえてこなかった。
そのとき、足音が聞こえ、青木岑が顔を上げると、来訪者を見て少し驚いた。
「院長先生」
「ああ、中の様子はどうだ?」
「まだわかりません」青木岑は心配そうに答えた。
「心配する必要はない。西尾博士の医術は信頼できる」
青木岑は頷いた……
そのとき、院長は意味深げに言った。「おそらく彼を動かせるのは君だけだろう」