青木岑が残高を確認した時、本当に衝撃を受けた……
慎重に桁数を数えてみた。「一、十、百、千、万、二百万……千万?」
間違いない。青木岑の元々持っていた8000円の残高と合わせて、合計1000万8000円だった。
つまり、西尾聡雄の月給は1000万円ということ?
実際、1000万円は西尾聡雄にとってはそれほど大金ではない。GKグループの総資産は、控えめに見積もっても数百億円はあるはずだ。
たかが1000万円は、毎月の形式的な手続きで、経理部が社長に象徴的に支払う給与に過ぎない。
でも青木岑にとって1000万円は、天文学的な数字だった……
これからは衣食住の心配はないのかな?これって玉の輿に乗ったってことになるのかな?
ソファーに横たわり、豪邸や不動産権利証、結婚証明書、そして銀行口座の残高を見つめながら、青木岑はふと、これが全て現実とは思えなくなった。
西尾聡雄が御苑から丘の上の邸宅まで車を走らせるのに、30分以上かかった。
家に着いた時には既に夕方6時過ぎ、7時近くだった。
西尾聡雄が車を停めると、今日は玄関前の駐車場に数台の見慣れない車が止まっているのに気付いた。ベントレーやマセラティ、ポルシェ918もあった。
どうやら家に客が来ているようだ……
西尾聡雄は黙って鍵を取り出し、ドアを開けて中に入った。リビングには確かに大勢の人が座っていた。
「西尾、お帰り。ちょうど良かったわ。みんなあなたを待って食事をしようとしていたところよ」
「食事はいらない」そう言って西尾聡雄は人々の間を抜けて階段を上がっていった。
彼が戻ってきたのは少し荷物を取りに来ただけで、これで正式に引っ越すことになる……
しかし西尾の両親はそのことを知らないようだった……
友人を何人か家に呼び、若い女性も二人いた。一目で育ちの良いお嬢様だとわかる。
西尾聡雄が階下に降りてきた時、手には紙袋が一つあり、中には彼の身の回りの品が入っていた。
「西尾、ママが紹介するわ。こちらは大石伯母の娘さんで、風行グループ社長のお嬢様の佐藤美奈子さん。そしてこちらは岩本伯父の妹さんで、ホーリーナイツメディア社長のお嬢様の岩本遥さん。二人とも……」
「母さん、用事があるので先に行くよ。それと、最近仕事が忙しいから家には帰れない。外に家を買ったから。何かあったら電話してくれ」