「やあ、岑ちゃん。しばらく会わなかったけど、また綺麗になったね」
青木重徳は深紫のスーツに黒いパンツを身につけ、全身高級ブランドに身を包んでいた。
西尾聡雄とは違い、彼は服装にこだわりがあり、派手な色使い、例えば赤や深紫を好んだ。
青木重徳は今年29歳で、容姿端麗、謙虚な紳士の様相を呈していた。
青木グループの副社長という立場も相まって、上流社会で非常に人気があった。
彼は女性にモテる達人だと言われ、芸能界のスターから国際モデル、名家の令嬢まで、付き合った女性は両手で数え切れないほどで、よくエンターテインメント誌で彼の姿が目撃されていた。しかし、社会での評価は非常に高かった。
彼は青木家の未来を担う者と言われ、養子という身分でありながら、二房出身の姉弟を明らかに凌駕していた。
青木重徳は、どこへ行っても色気のある目つきと狐のような微笑みで、女性たちに大人気だった。
産婦人科の若い看護師たちも魅了され、こっそりと彼を見つめていた。
「何度も言ってるでしょう。そんな風に呼ばないで。私はあなたの妹じゃない」青木岑は極めて冷淡な態度を示した。
「わかったよ、青木岑。今日は頼みがあってね。私の女友達が婦人科検査を受けたいんだけど、この病院は専門医の予約が取りにくくて。君が産婦人科にいるから、専門医との予約を取り持ってくれないかな?」
「無理です。私は研修看護師に過ぎませんし、そんな権限もありません。青木坊ちゃんは権力者なんだから、直接院長に頼めばいいでしょう」
そう言うと、青木岑は産婦人科の診察室に入っていき、彼を無視した。
しかし青木重徳は怒った様子もなく、ただ口角を上げただけだった。
彼は青木グループの副社長として、病院で優先的な扱いを受けることができ、青木岑のような小物の助けなど必要なかった。
ただ、彼は特に青木岑と接触することが好きだった。彼女を見ると、なぜか気分が良くなる。昔と同じように。
その時、美しい女性が産婦人科の教授の診察室から出てきて、親しげに青木重徳の腕に抱きついた。
「重徳、教授が私最近風邪気味だから、シーフードを控えめにするように言ったの。これからはビーチでのバカンスも減らさないといけないわね」
「大丈夫、帰ったら僕が温めてあげるよ」
「もう、いつもからかってばかり」女性は甘えた声で言い、二人は立ち去った。