「大丈夫」西尾聡雄はそう言ったものの、顔色は既に真っ青だった。
医療従事者である青木岑は、一目で彼の体調の悪さを見抜いた。
「聡雄さん、早く教えて、どこが具合悪いの?」青木岑は特に焦っていた。さっきまで元気だったのに、どうして急にこんな状態になったのか。
「ここが少し痛い」腹部を指さしながら、西尾聡雄はゆっくりと口を開いた。
青木岑は場所を確認し、指で触ってみた。「虫垂炎ではないはずよ、これは虫垂の位置じゃない。だめ、時間を無駄にできない、今すぐ病院に行きましょう」
「必要ない、大したことじゃない」
「だめ、私の言うことを聞いて」青木岑は怒った。西尾聡雄は国際一流大學の医学博士なのに、自分の体調が悪いのに我慢するなんて、本当に理不尽だ。
「ただの腸炎だよ、大したことじゃない」最後に、西尾聡雄はようやく本当のことを話した。