「私たちの時代は、物が壊れたら修理しようと考えていたけど、今の時代は、物が壊れたら新しいものに買い換えようとする。恋愛も同じよ」
青木岑が片山先生の言葉の深い意味に感動していた時、西尾聡雄が突然口を挟んだ。「でも、あの時代は世間の圧力で、不幸な結婚生活を送っていても離婚できず、うつ病で亡くなる人も多かったと聞きました。今は離婚率は高くなりましたが、心が楽になりましたよね」
青木岑:……
片山先生:……
二人は西尾聡雄の言葉に言葉を失った……
最後に青木岑が我に返り、テーブルの下で西尾聡雄の太ももをつねりながら尋ねた。「咳、そんな歪んだ考えはどこで聞いたの?」
「私の言ったことは事実じゃないですか?」西尾聡雄は正々堂々と問い返した。
青木岑は急いで彼の服の裾を引っ張り、「黙って」と小声で言った。
声は小さかったが、片山先生にははっきりと聞こえていた。
彼女は微笑んで言った。「大丈夫よ。西尾君の言うことも間違っていないわ。私たちの時代は考え方が古く、親が決めた結婚も多かった。不満があっても離婚なんて考えられなかった。その時代に離婚すれば、それは親不孝とされ、親も受け入れられないし、近所の人々からも非難されたわ。今は時代も進歩して、若い人たちの考え方も進歩的になった。自分の幸せを追求することを推奨する時代。人生は短いから、自分を大切にしないとね。それも間違いじゃない。ただ、時代がどう変わっても、人の本質がどう変化しても、最初の気持ちを忘れないでほしい。初心を忘れなければ、道は開けるものよ」
西尾聡雄はこの言葉を聞いて、深く心を動かされたようだった……
初心を忘れなければ、道は開ける。その通りだ。青木岑は既に彼の人生の全てとなっていた。
彼は自分の初心を一度も忘れたことがなかった。七年前、西尾聡雄がまだ青春真っ盛りの少年だった頃。
父親の前で「青木岑と結婚したい」と言い切った。
そして七年が経ち、本当に青木岑と結婚した。彼にとって、青木岑は永遠に最も大切な存在だった。
片山先生の家を出た後、珍しく二人は急いで帰らなかった。
西尾聡雄は車を中央中学校の門前に停め、二人で運動場に入った。
中央中学校は今でも市内の重点高校で、この時間帯は生徒たちが夜間自習中だった。