第164章:節度

青木岑は実際、知能と感情の両方が高いのですが、ただ一つの小さな欠点があります。

それは西尾聡雄に対面した時に、時々思考能力を失ってしまうこと。これが当時、西尾聡雄に追いかけられて落とされた理由でもあります。

彼女はいつも、すべては天命だと感じていました。どんなに理性的で、どんなに完璧であっても、西尾聡雄の前では一撃で崩れてしまうのです。

だから西尾聡雄の抱擁とキスに対して、抵抗したくても全く力が入らない。というより、心の中では無意識に逃げたくないのかもしれません。ただ貪欲に彼を独占し、彼特有の香りを独り占めしたいだけなのです。

ちょうど生徒の休憩時間で、学校の放送では皆のストレス解消のために音楽が流れていました。

優しい音色が響いてきて……

また原点に戻って、記憶の中のあどけない顔、私たちはついにこの日を迎えました。

机の下の古い写真、数えきれない思い出が繋がって、今日、少年は少女との最後の約束に向かいます。

また原点に戻って、鏡の前で呆然と立ち尽くす。不器用に赤いネクタイを結ぶ。

大人っぽく髪を整えて、かっこいいスーツに着替えて、これから会う君は想像以上に美しいはず。

あの頃の時間に戻りたい、教室の前後の席に戻って、わざと優しい叱りを受けたい。

黒板の順列組み合わせ、君は解きたいの?

誰と誰が座って、彼は彼女を愛している。

あの頃見逃した大雨、あの頃見逃した恋。

抱きしめたい、見逃した勇気を抱きしめたい。

かつては世界を征服したかった、振り返ってみれば、この世界の一つ一つすべてが君だった。

あの頃見逃した大雨、あの頃見逃した恋。

君に伝えたい、忘れていないと伝えたい。

あの夜の満天の星、パラレルワールドでの約束。

もう一度出会えたら、しっかりと抱きしめる、しっかりと抱きしめる。

星野源の『あの頃』という曲が、特別にぴったりと合っていて、すべてがちょうど良かった。

青木岑は感性豊かな女で、この時この瞬間、特別に心を動かされていました。

西尾聡雄とのあの頃を思い返し、思わず彼の広い背中に手を回して、しっかりと抱きしめました。

確かに彼女と彼は七年も離れていました。人生にいったい何個の七年があるのでしょうか?

青木岑が初めて自分から抱きしめてくれたのを感じて、西尾聡雄の心に波紋が広がりました。