第232章:薬を飲む

青木岑は唇を噛んで、ただ気まずそうに笑うだけで、認めることも否定することもしなかった。

「じゃあ、あなたは青木重徳の妹なの?すごい!ラッキーね。彼の連絡先持ってる?LINEのIDある?教えて教えて」数人の看護師さんが騒ぎながら近寄ってきた。

青木岑は少し困った様子で、「すみません、持ってないんです。私、彼とは連絡を取り合っていないので」

「青木岑さん、本当に青木家の人なら、どうして看護師なんかしてるの?青木家はあんなにお金持ちなのに、青木婉子みたいにセレブになれるはずじゃない?」

女はいつも噂好きで、あれこれ聞いてきたが、青木岑はあまり答えたくなさそうだった。

そのとき、看護師長の細川玲子が近づいてきた。「みんな、仕事はしなくていいの?」

「看護師長!」数人の看護師さんは驚いて脇に退いた。

「みんな持ち場に戻りなさい。勤務時間中よ」細川玲子は威厳を持って、数言で見物人の看護師たちを追い払った。

そして青木岑を見て、優しく尋ねた。「大丈夫?」

「はい、大丈夫です、看護師長」

「休暇が必要なら、私に言ってくれればいいのよ」

「いいえ、大丈夫です」

「そう、あなたの様子が落ち着いているようで安心したわ。桑原坊ちゃんの方は...状態があまり良くないの。他の看護師を拒否して、この数日は薬も飲まず、点滴もせず、再検査もキャンセルしたわ。あなたなら違うかもしれないと思って。あなたは唯一彼に成功して注射できた看護師だもの」

「つまり、また私に彼の世話をしてほしいということですか?」青木岑は少し抵抗を感じた様子だった。

「ただ伝えただけよ。嫌なら無理しなくていいわ」細川玲子は賢明な人で、当然強制的な態度は取らなかった。

しかし、そう言われると、青木岑はかえって気が引けた。

「じゃあ、試してみます。できるだけ任務を完遂します」そう言って、青木岑は白衣のボタンを留め、1号室の薬を持って向かった。

数人のボディーガードは青木岑を見て、少し喜んだ様子だった。彼らは、この看護師だけが自分たちの坊ちゃんを扱えることに気付いていたからだ。

青木岑がドアを開けて入った時、桑原勝は新聞を読んでいて、かなり真剣な様子だった。

「出て行け」一瞥もせずに、桑原勝は又もや取り入ろうとする女だと思い込んでいた。