第255章:譲渡

「荒木社長……」岩本奈義は今をときめく女優の一人で、宮廷ドラマを3本連続で演じたことで、本土で有名な四天王の一人となった。清純で可愛らしい容姿で、年齢も若く、今年はまだ24歳で、青木岑と同い年だという。

彼女が新人から僅か3年で人気者になれたのは、スターキングと深い関係があった。

当時、命がけで桑原勝の車を止めたことで、有名になるチャンスを掴んだという。

桑原勝の運転技術が優れていなければ、岩本奈義はその場で命を落としていたかもしれない。

このような命知らずな方法を真似する人はほとんどいなかったが、まさにこの勇気が桑原勝の興味を引いたのだ。

桑原勝の多くのガールフレンドの一人として、岩本奈義は比較的寵愛されていた。素直で分別があったため、桑原勝と3年付き合い、芸能界で順風満帆な生活を送り、誰も彼女に手を出す勇気はなかった。

外部の人々は彼女に何か裏付けがあると思い、お金持ちの子女だと思っていた。

業界の人々は彼女が単なる桑原勝の玩具で、いつでも捨てられる可能性のある玩具だということを知っていた。

桑原勝は振り向いたが、何も言わなかった……

彼女はすぐにシャネルのバッグを置き、小刻みな足取りで近づき、桑原勝をベッドまで支えた。

「地方でロケを終えて戻ってきたところです。退院が近いと聞いて、本当に良かったです」岩本奈義の声は可愛らしく、少し赤ちゃんのような声だった。

「ああ」桑原勝は興味なさそうに、ただ一言だけ返した。

「南陵町でロケ中に、このライターを見つけました。アンティーク風で、とても地元らしい特徴があって、あなたに買ってきました」

岩本奈義は宝物を見せるようにバッグからライターを取り出し、差し出した……

桑原勝はそれを受け取り、二回点火してみたが、表情からは喜怒は読み取れなかった。

「来月、私の映画の初日舞台挨拶があるんですが、来ていただけますか?」岩本奈義は甘えるように桑原勝を見つめた。

「その時になってから」

岩本奈義は頷いた……桑原勝の機嫌があまり良くないのを感じ取ったのか、それ以上は何も言わなかった。

「お前はずっとピンクのランボーが欲しいと言っていただろう。外にあるのをやるよ」

「え?」岩本奈義は桑原勝の言葉に驚いて固まった。