第268章：彼女はあなたが触れられる女ではない（5）

西尾聡雄は少し驚いて彼女を見つめた。彼女が何をしようとしているのかわからなかった……

「えっと……」佐藤然も呆然としていた。

「告白にも時と場所があるでしょう。あなたが選んだタイミングは明らかに不適切よ。それに、西尾聡雄のことを青木岑が好きなのを知っているのに、まだ割り込んでくるなんて、呆れるわ」と熊谷玲子は皮肉を込めて言った。

「好きな人のことを伝えるのに何が悪いの？私だって言う権利があるわ」

西尾聡雄は少し居心地が悪くなり、青木岑を見た……

「お腹いっぱい？」青木岑は優しく尋ねた。

西尾聡雄は頷いた……

青木岑はナプキンを取り、みんなの前で西尾聡雄の口元を優しく拭いてあげた。

そして彼の腕を取り、「じゃあ、行きましょう」と言った。

青木岑は西尾聡雄の手を引いて立ち去った。明らかに大石紗枝という招かれざる客を歓迎していなかった。

熊谷玲子は勝ち誇った目で大石紗枝を見て、「ごめんなさいね、一口も食べさせてあげられなかったわ。時間になっちゃって。次は早めに来てね」と言った。

大石紗枝は怒りで顔が真っ青になった……

佐藤然は同情的な目で大石紗枝を見つめ、その後階下へと向かった……

帰宅後、青木岑は熊谷玲子にLINEを送り、状況を確認した。

そして大石紗枝が可哀想に思えた。まるで彼女たちに弄ばれたみたいだった。

「玲子、もうこんなことはやめましょう」

「何よ、あの腹黒い女の大石紗枝はいつもグループで西尾聡雄のことを話題にして、まるで親しいみたいな顔してたけど、実際あなたの旦那さまは彼女なんて眼中にないのよ。ただの一方的な思い込みよ」

「一方的な思い込みでも、それは彼女の問題よ。でも彼女の言うことは間違ってない。誰かを好きになることは悪いことじゃない。私たちには彼女を嘲笑う資格も権利もないわ」

今夜の大石紗枝をからかった件で、青木岑は心の中で少し気分が悪かった。でも玲子が自分のために怒ってくれたことも分かっていた。

「分かったわよ、お姉さま」

「いい子ね。今度また美味しいものを奢るから、早く寝なさい」

玲子とLINEを終えた後、青木岑はソファーでテレビを見ている西尾聡雄を見た。

表情がなく、怒っているのかどうか分からなかった。

玲子は本当に行き過ぎた……

そこで彼女は小さな足取りで近づき、西尾聡雄の隣に座った。