「私が姉だってことを覚えているの?」
「ハハハ……お姉ちゃん、怨念が深いね」
「自分の家で育てた恩知らずの狼め。大きくなったら嫁のことばかり考えて、実の姉のことを忘れるなんて。怨念が深くならないわけないでしょう?」
「姉さん……僕は恩知らずじゃないよ。将来は必ずお姉ちゃんの面倒を見るから」
「馬鹿言え。あなたは19歳で私は24歳。私が80歳になる頃には、あなたも75歳よ。その年でどうやって面倒を見るっていうの……」青木岑は怒って言った。
「ハハハ……お姉ちゃん、頭いいね。数学は体育の先生に習ったんじゃないでしょう」
「無駄話はやめて、本題に入りましょう」
「はい、姫宮様、ご命令を」
「最近、授業が少なくなったの?デートばかりしているみたいだけど。恋愛は恋愛でいいけど、油断は禁物よ。勉強は大切。このままじゃ、卒業してもあなたのレベルではGKに入れないわよ」
「わぁ、お姉ちゃんは義兄さんの会社に行くことを承諾してくれたの?」
「あなたの態度次第よ。義兄さんは私に話してくれたわ。まだ様子を見ているところ……西尾聡雄の義理の弟だからって、好き勝手していいわけじゃないわ。自分の実力も必要よ。GKは単なるプラットフォームで、どこまで飛べるかは自分次第なの」
「はいはい……分かったよ。お姉ちゃん、うるさいなぁ。ますます母さんみたいになってきた」
青木岑:……
「そうそう、昨日実家に帰った時、母さんがお姉ちゃんのことを話してたよ」
「母さんは私のことを何て言ってたの?」
「えーと……言わない方がいいかな。言ったらショックを受けそうだし。母さんってあんまり遠慮なく物を言うでしょう。知ってるでしょ」原幸治はわざとからかった。
「早く言いなさい」
「えーと……お姉ちゃんは結婚してからもう随分経つのに、どうしてお腹の中に動きがないのかって」
「それで?」青木岑は更に聞いた。
「だから母さんが、時間があったら義兄さんと一緒に病院で検査を受けてみたら?って。誰かに問題があるのかもしれないって」
青木岑:……
青木岑は晴天の霹靂を受けたような気分で、外はカリカリ、中はふんわりの状態だった。
年配の方って余計な心配をするものね。結婚したからといって、すぐに妊娠できるわけじゃないのに。