「本来なら南山城で週末を一緒に過ごすと約束していたんだ。最近疲れているだろうから、リラックスした週末を過ごしてもらおうと思っていたけど、今は……」ここまで言って、西尾聡雄は言葉を切った。
そんな理由だったと知って、青木岑はほっと胸をなでおろした……
「バカね、会社の用事が大事でしょう。そんな大きな事件が起きたんだから、きちんと対処しないと。私と一緒に過ごす機会はまだまだたくさんあるわ。全部片付いてからでも遅くないわ」と青木岑は慰めた。
「うん、この忙しい時期が過ぎたら、海外旅行に行こう。まだちゃんとした新婚旅行に連れて行けていないからね」
西尾聡雄は申し訳なさそうに言った……
「誰が言ったの?この前、雲頂山に連れて行ってくれたじゃない」青木岑は軽く笑った。
「雲頂山は数に入らないよ。この忙しい時期が終わったら、モルディブに行こう」
「うん、待ってるわ」
電話を切ると、青木岑の気分は一気に良くなった……
西尾聡雄は決してネガティブな感情を周りの人に、特に最愛の青木岑に見せない人だった。
青木岑は電話を切って、おとなしく階下に降りて食事をした……
特別に雇われたシェフは女主人の好みをよく理解していたようで、海鮮料理を何品も作っていた。
ボストンロブスター、上海蟹の蒸し物、帆立の春雨蒸しニンニクソース、そして塩水エビ。
青木岑は食欲がなくても、西尾様との約束だったので、少しは食べた。
一方、西尾聡雄は実際にはすでに忙殺されていた……
飛行機を降りてすぐ、青木岑に電話をかけながら、永田さんから事故現場の最新情報を聞いていた。
青木岑との電話を切ると、空港の出口に向かい、そこで四方八方からやってきたメディアに囲まれた。
「西尾さん、今回はどのように対処されるおつもりですか?」
「西尾さん、今回の死亡事故に対して、御社はどのような補償をされるのですか?」
「西尾さん、GKの今年就任された執行役員として、このような事態にどのような感想をお持ちですか?」
「西尾さん、死者が3人から4人に増えたと聞きましたが、政府がGKの手抜き工事の疑いを調査し始めたそうですが、これについてどうお考えですか?」
「西尾さん、今日午後の事件発覚後、GKの株価は5%下落しましたが、明日も続落すると予想されますか?ご見解をお聞かせください」