天界は月下倶楽部に次ぐ二番目に大きな夜の店だが、月下倶楽部とは違って、管理が杜撰だった。
酔っ払いが騒ぎを起こすことが頻繁にあり、警察が目を光らせる灰色地帯となっていた。
青木岑は西尾聡雄を連れて来たくなかった。ここは人が多く、目も多いからだ。
万が一誰かに見られでもしたら、西尾聡雄の名誉に傷がつくことになる。
しかし、彼女自身は違った。青木源人が先日彼女の身分を認めたばかりだったからだ。
彼女は青木家の一員となり、たとえ青木隼人と何か揉め事があっても、青木家の内輪の問題として処理できる。
月下倶楽部での長田輝明の一件の教訓から、青木岑は衝動的な行動を控えるようになっていた。
今この瞬間、心の中では本当に怒りが込み上げ、青木隼人という人でなしを引き裂きたい気持ちでいっぱいだった。
しかし、彼女は計画通りに進めることにした……
「お嬢様、お待ちください」最上階の入り口で、従業員が彼女の行く手を遮った。
「私は青木隼人の姉です。彼に用があって来ました」
「ああ、青木坊ちゃんをお探しですか。E10の個室にいらっしゃいます」従業員は青木岑が一人だと見て、警戒を解いた……
青木岑は微笑みながら頷き、E10の個室に向かって歩き出した。
部屋の前まで来たが、中には入らず、周囲を見回した。
近くに換気口があり、その上は屋上になっているのを発見した。
青木岑は廊下の暗がりに入り、ライターを弄びながら……
彼女は青木隼人の性格をよく知っていたので、ただ待っているだけで収穫があると信じていた。
案の定
三分後
青木隼人は酔っ払った状態でギャル系の女性を連れ出し、二人は廊下で抱き合いながらキスを交わしていた。
そして廊下の暗がりに来たとき、二人とも青木岑の存在に気付いていなかった。
だから青木隼人がその女性の****に手を伸ばそうとした時。
青木岑が突然口を開いた。「青木隼人……あなたは全然成長していないわね……いつか青木重徳に殺されても文句は言えないわよ?」
「誰だ?」青木隼人は酔った目を向けながら振り返った。
ギャル系の女性も驚いて、「ここに誰かいるの?」と声を上げた。
「お前か?」青木岑の姿を確認すると、青木隼人は軽蔑したように言った。
明らかに、まだ酔いが覚めていない様子だった……