「ずっと調査を依頼していた東陶町のことなんだけど……」
「どうだ?何か分かったのか?」西尾聡雄は焦りを見せた。
この件だけは特に気にかかっていた。それは青木岑の願いだったから……
青木岑の今一番の願いは、おそらく実の両親を見つけることだった……
「その件は複雑でね、どう説明したらいいか」リックの口調は重々しかった。
「構わない、話してくれ」
「できることなら……もう調査は止めた方がいいと思う」
「なぜだ?」西尾聡雄は疑わしげに尋ねた。リックの能力は知っているだけに、こんな自信のない発言をするはずがない。
「この件の調査に派遣した者が……一人も戻って来ないんだ」
「死んだのか?」
「死んだかどうかは分からない。とにかく連絡が取れなくなった。我々の業界では分かるだろう、連絡が途絶えるということは、まず最悪の事態を意味する」
「どうしてこんなことに?」西尾聡雄は眉をしかめた。青木岑の出自は彼が想像していたよりもずっと複雑なようだ。
前回東陶町に行って永田伯父の死を目撃して以来、ただ事ではないと分かっていた。
しかし、こんなにも複雑だとは思わなかった。ただの無名の町のはずなのに、一体どんな恐ろしい黒幕が操っているのだろうか?
「有用な手がかりは見つからなかったが、一つだけ確実に言えることがある。東陶町という場所は単純な場所ではない。スパイが多く、この件を調査しようとする者は必ず背後の勢力に察知される。我々は表で動いているが、奴らは闇の中にいる。我々は危険な立場にいる……それに……この件は一つの勢力だけでなく、他の者も介入しているようだ。とにかく、水は深い。現地のやくざとも連絡を取ったが、関係は良好なはずなのに、はっきりと言われた。東陶町の件は既に怪異事件となっており、背後にいる者は幽霊よりも恐ろしいと……調査は諦めろと」
「どうしてこんなことに?」
「だから、奥さんの出自はかなり厄介なものかもしれない……たとえ最後に見つかったとしても、良いことではないかもしれない。諦めた方がいいかもしれない」
「分かった……」
「でも心配するな。君がまだ調査を続けたいなら、私も協力は惜しまない」
リックは西尾聡雄に言わなかった。この件の調査で既に九人を失っていることを。
しかし西尾聡雄は賢い。彼の口調からそれを察していただろう。