第224章:青木醫師、診察をお願いします(4)

「奥さん、仕事終わった?」

「まだよ、残業中で、あと30分くらいかかりそう」

「わかった、迎えに行くよ」

「うん、じゃあまた」

電話を切ると、青木岑は突然思い出したことがあり、すぐに永田補佐に電話をかけた。

「奥様、なんでしょうか」永田はすぐにお世辞を言った。

「30周年記念式典には、全支社の人が来るの?」

「はい、奥様」

「そう、T市支社の人たちの参加をキャンセルして。全員来させないで」

「えっと...」

「あそこの事故処理がまだ終わってないし、悪評も続いてるから、式典に影響が出るのが心配なの。この件は西尾社長に直接話すわ。私の指示通りにやってくれればいいわ」

「承知いたしました、奥様」

永田は電話を切り、指示通りにT市支社に電話をかけた。

「笹井社長、永田です」

「永田さん、どうぞ...」笹井春奈は高級ブティックでドレスを試着中だった。

会社の30周年記念式典で、全員の目を引こうと準備していた...

「あの...実は今連絡を受けたんですが、担当されている地域での悪評が収まっていないため、今回の30周年記念式典への出席を見送らせていただくことになりました」

「何ですって?」

笹井春奈は一瞬で心が凍りついた...

「申し訳ありません。もっと早くお伝えすべきでしたが、私も今しがた連絡を受けたばかりで...ですので、笹井社長にはご不便をおかけしますが、他の社員の方々にもご理解いただき、年末の社員総会でお会いしましょう」

「なぜ私たちの出席を認めないんですか?」

「事故の件がまだ悪評の対象となっているため、会社としてリスクを避けたいということです」

「これは誰の意向なんですか?西尾社長ですか?」笹井春奈は胸が締め付けられるような思いだった。

こちらに来てから仕事のプレッシャーも大きく、毎日問題の後始末に追われ、さらに様々な方面からの批判や非難にも直面していた。

彼女は負けず嫌いで、西尾社長の注目を集めるため、常に成果を出そうと頑張っていた...

今回の30周年記念式典では、少しリラックスして、久しぶりに西尾社長に会えると思っていた。

しかし...その資格さえも剥奪されてしまった...

「西尾社長のご意向です」永田は、奥様の意向イコール社長の意向だと考えた。

「信じられません。直接西尾社長に確認します」