第226章:青木醫師、診察をお願いします(6)

「行くさ、絶対に行くよ」桑原勝は何気なく笑った。

「本当に懲りないね」

「別に...必ず行くんだ。行くだけじゃなく、みんなに私のことを覚えてもらいたいんだ」

「えっ...まさか、ステージで告白するつもりじゃないよね?そんなことしないでよ、青木岑が困るわ」

「もちろんそんなことはしないよ。彼女に迷惑をかけたくないし、噂されるのも嫌だからね」

そう言って、桑原勝は立ち上がった。「じゃあ、二人でラブラブしてな。俺は矢野川のところに飲みに行くよ」

南区療養院

西尾聡雄は時間通りに青木岑を迎えに来た。彼女は服を着替えて、バッグを持って出てきた。

マイバッハが玄関前に停まっているのが見えた...

「時間通りね」青木岑は微笑んだ。

「どこで食事する?それとも家で作る?」西尾聡雄は優しく尋ねた。

「実家に行きましょう。母さんから電話があって、幸治が帰ってきたから、私たちも来るように言われたの。たくさん料理を作ったって」

「いいよ」

西尾聡雄は頷いて、実家に向かって車を走らせた。

途中で、彼は笑いながら聞いた。「ん?なんだろう、この酸っぱい匂いは?」

青木岑は意味が分からず、クンクンと嗅いでから困惑した表情で「ないわよ?本当に匂うの?」

「うん、すごく酸っぱい匂いがする...誰かの酢の壺が倒れたのかな」

「西尾様...言外の意味があるわね」最初は本気だと思っていたが、この言葉を聞いて、青木岑は騙されたことに気付いた。

「西尾奥さんは凄いね...ライバルが現れる前に、芽のうちに摘んでしまうなんて」

「西尾様の言っているのは...?」

「T市のことだよ」

「ああ、それについて話そうと思っていたところよ。あっちで事故が起きてまだ間もないから、彼らが来たらメディアが変な記事を書きかねないわ。会社にも影響があるし、今はまだ後始末の時期だから、控えめにした方がいいと思って」

「その通りだね」西尾聡雄は微笑んだ。

「本当に?」

「嘘だとは言ってないでしょう...」西尾聡雄は思わず笑った。

「もう...いいわ、はっきり言うわ...私、笹井春奈が嫌いなの...来て欲しくないの」

「分かったよ、全て君の命令通りにするよ」

西尾聡雄は青木岑のやり方に同意しているようだった...

「私のわがままだと思わない?」