「奥さん、今夜細川市長が帰国して私的なパーティーを開くんだけど、一緒に来ない?」
正直に言うと、西尾聡雄から誘われて、彼女の心も嬉しかった……
「いいわよ、仕事が終わったら会いに行くわ」
「うん、ドレスは用意させておくから、早めに来てね」
「わかった」
電話を切ると、突然後ろから名前を呼ばれた。
「青木先生」
「何かありましたか?」小西順子が息を切らして走ってくるのを見て、青木岑は少し不思議に思った。
「先ほどあなたの事務室に行ったら、整形外科にいないと言われて」
「ええ、これからは神経内科にいますから、用事があればこちらに来てください」
小西順子は頷き、持っていた黒いビニール袋を青木岑に渡した。
「青木先生、これをどうぞ」
「何ですか?」
「大したものじゃないんです。私が作ったものなんですけど、気持ちだけ」