第292章:卵を産まない鶏(二)

青木岑は頷いて、細川市長と細川詩に微笑みかけた……

「細川伯父、こんにちは」

「やあ、君ね、初めて奥さんを連れ出すなら、もっと早く私たち年長者に会わせるべきだったよ……この前、海外で君のお父さんに会って、君のことも話題になったんだ」

プライベートなパーティーでの細川市長は、慈愛に満ちた表情で、テレビで見るような厳格な様子は全くなかった。

おそらく場の雰囲気が違うせいだろう……

細川詩は今日、純白のロングイブニングドレスを身にまとい、優雅で上品だった。

彼女は青木岑に微笑みかけ、「来てくれてありがとう」と言った。

「どういたしまして」青木岑も微笑み返し、誰もあの日の約束破りについては触れなかった。

細川詩も怒っている様子はなかった……

しかし、そうであればあるほど、青木岑は不安になった。

彼女はもっと素直な女性の方が好きだった。あまりに偽りがあると、対処するのが難しくなる。

その後、西尾聡雄は彼女を連れて、富豪たちや政界の要人たちに一人ずつ挨拶をした。

彼女も笑顔で応対した。社交は彼女の好きなことではなかったが、西尾聡雄のため、そして今の奥様という立場のために、受け入れることができた。

その後、西尾聡雄が細川市長と個別に話し始めたので、青木岑はその場にいるのは適切ではないと思い、一人でシャンパンを持って歩き回っていた。

しかし思いがけず、青木婉子と鉢合わせてしまった……

青木婉子は実際、青木隼人よりも頭が悪かった……

青木重徳は彼女を叱ったことがあったが、彼女はすでに忘れてしまったようだった。特に先ほど桑原勝にワインをかけられたことで。

彼女は怒りのすべてを青木岑にぶつけていた……

「青木岑」

彼女は無礼に呼びかけた。

青木岑は振り返り、怒り狂って近づいてくる青木婉子を見たが、口を開くこともなく、彼女と話す気はなかった。

「青木岑……あなた、桑原勝に私の悪口を言ったでしょ?」

「桑原勝?彼がどう関係してるの?」青木岑は呆れた。

「まだ嘘をつくの、絶対あなたが彼に何か言ったから、彼はあんな態度を取ったのよ……そうでなければ桑原坊ちゃんが……」

「彼があなたにどうしたの?」青木岑は本当に好奇心を持った。桑原勝が青木婉子に構うなんて、奇跡だと思った。