銀灰色の車が一瞬門の前を通り過ぎ、道の果てへと向かっていった。
水野日幸はため息をつき、寂しげに両腕を抱きしめた。彼ではなかった。
深夜零時、もう帰ってこないと確信した彼女は、ようやく諦めて、傘に積もった厚い雪を払い落としながら、梯子を降りた。
'長谷川深'の雪像は傘を差し、椅子の上に置かれていた。椅子の脚は雪に埋もれそうなほどで、積雪は優に50センチはあっただろう。
水野日幸は大切な人に最初にプレゼントを見てもらいたくて、'長谷川深'を彼の家の玄関前に運び、傘をしっかりと支えた。
「お兄さん、おやすみなさい」水野日幸は'彼'に向かってにっこりと微笑んで言い、何かを思い出したように自分のマフラーを外し、丁寧に'彼'に巻いてあげた。
全てを終えた後、もう一度道路の方を見やった。