大雪の降る日、バスの中には人影もまばらだった。
水野日幸は顔を向け、顎を支えながら窓の外の大雪を眺めていた。
家に帰ったら、絶対に大佬に見せる雪だるまを作ろう。彼の姿を模して、雪の彫刻を作ることにしよう。
そう考えると嬉しくなって、カバンからスケッチブックとペンを取り出し、線画を描き始めた。
隣に座っていたお姉さんは、何気なく一瞥を投げかけただけだったが、彼女が数筆で描き上げた端正な容姿の美男子の絵に、思わず見とれてしまった。
なんてこと!
この可愛い子、すごい才能の持ち主じゃない!
この絵、すごく素敵!
「あの、イラストレーターさんですか?」お姉さんは、彼女がきっと凄腕の絵師さんに違いないと思った。
「いいえ」水野日幸は首を振った。
「どの芸能人を描いているんですか?」お姉さんは話好きで、こんなにも美しい男性を見るのは初めてだった。