第67章 長くなる鼻

生活指導の先生はすぐに警備員を連れて教室に駆け込み、殴り合っていた生徒たちを引き離した。

一橋渓吾は顔も体も傷だらけで、目には憎しみが渦巻き、殺気を放ち、今にも飛びかかって噛みつきそうな様子だった。

残りの数人は彼以上に怪我が酷く、わめき声を上げながら生活指導の先生に一橋渓吾が先に手を出したと告げ口をした。

生活指導の先生は激怒した。数学オリンピックに出場予定の、学校の優秀な生徒たちが喧嘩をするなんて。教室内の生徒たちを指差しながら「誰が先に手を出したのか言いなさい」

クラスの生徒たちは一斉に一橋渓吾を見た。

「先生」水野日幸が手を挙げて立ち上がった。「証言できます。一橋渓吾が先に手を出しました」

一橋渓吾は感情が崩壊寸前だった。

水野日幸の一言は、ラクダの背中を折る最後の一本の藁となった。

彼は突然体を硬直させ、信じられない様子で彼女を一瞥すると、心が氷の穴に落ちていくような感覚に襲われた。

先ほど侮辱されたとき、誰かが助けに来ることは期待していなかった。

しかし、彼女が立ち上がって自分を指差すとは思ってもみなかった。

「彼らは」水野日幸は教室の生徒たちを指差した。「最初に根も葉もない噂を流して一橋渓吾を冤罪に陥れ、土下座を強要し、みんなで笑い者にしました。

そして病気の祖母を呪い、お金がないなら早く死ねばいいと言いました。私が一橋渓吾なら、あの汚い口を引き裂いて、おしっこを漏らすまで殴っていたでしょう!」

一橋渓吾は少女の言葉を聞きながら目を赤くし、心は酸っぱく後悔に満ち、複雑な思いで恥ずかしさに耐えられなかった。

どうして彼女をあんな連中と同じだと思ってしまったのだろう。

さっきの一瞬、本当に彼女の真意を疑ってしまった。

生活指導の先生は険しい表情で、学校でいじめられていた一橋渓吾の件を知っていたはずだった。厳しい顔つきで「冗談を言い合っただけで、暴力を振るっていいのですか?」

特進クラスの生徒たちは、みな優秀な子供たちだ。こんなことで処分を受けては学校の評判に関わる。

それに、これらの生徒たちの背後には権力者がいる。得策ではない。利害を考慮した結果、彼は彼らを守ることを選んだ。

「じゃあ、先生のお母さんが早く死ねばいいですね!」水野日幸は冷たい声で、嘲笑うような表情を浮かべた。