第67章 長くなる鼻

生活指導の先生はすぐに警備員を連れて教室に駆け込み、殴り合っていた生徒たちを引き離した。

一橋渓吾は顔も体も傷だらけで、目には憎しみが渦巻き、殺気を放ち、今にも飛びかかって噛みつきそうな様子だった。

残りの数人は彼以上に怪我が酷く、わめき声を上げながら生活指導の先生に一橋渓吾が先に手を出したと告げ口をした。

生活指導の先生は激怒した。数学オリンピックに出場予定の、学校の優秀な生徒たちが喧嘩をするなんて。教室内の生徒たちを指差しながら「誰が先に手を出したのか言いなさい」

クラスの生徒たちは一斉に一橋渓吾を見た。

「先生」水野日幸が手を挙げて立ち上がった。「証言できます。一橋渓吾が先に手を出しました」

一橋渓吾は感情が崩壊寸前だった。

水野日幸の一言は、ラクダの背中を折る最後の一本の藁となった。