第87章 必ず手に入れる

川村染はもちろんそれを覚えていて、笑いながら言った。「さすが名師から高弟が出るものね。私はてっきり中森茜という、今まで名前も聞いたことのない新人デザイナーが、どうして突然現れたのかと思っていたけど、江川歌見の弟子だったのね」

「ママ、中森茜先生をスタイリストにするの?」曽我若菜は目を輝かせながら笑った。水野日幸でなければ、誰でもよかった。

「そうよ」川村染は愛する娘を見つめながら笑顔で言った。「彼女のスタイリング能力は人を生まれ変わらせるほどすごいわ。師匠の江川歌見と比べても、むしろ上回っているくらいよ。あなたがデビューしたら、あなたのスタイリングも彼女に任せましょう」

この中森茜は、絶対に手に入れなければならない!

「ありがとう、ママ!」曽我若菜は甘えるように母親を抱きしめた。

芸能界では、優れたスタイリストがいれば何事も効率的に進む。様々な話題作りや、ファッションに関する記事で他の人たちを圧倒できる。

「若菜、中森茜を見つけるまでは、このことは誰にも言わないでね」川村染は娘に念を押した。

特に工藤沙織には知られてはいけない。あの女が知ったら、きっと手段を選ばず邪魔をしてくるはずだから。

「わかってるよ」曽我若菜は母親をぎゅっと抱きしめ、顔を上げて見つめた。「ママはすごいから、中森先生も断らないはずだよ」

中森茜に少しでも分別があれば、工藤沙織とママのどちらを選ぶべきか分かるはず。工藤沙織なんて、ママの足元にも及ばない。

川村染は娘の甘い褒め言葉を聞いて、満足げに誇らしく笑った。

当然よ。私が手に入れたいと思ったものは、手に入らないものなんてないのだから。

川村鶴喜は連絡先がまだ見つからないと言い、引き続き探すと約束し、どんな手段を使ってでも中森茜を引き抜くと川村染に保証した。

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映画の初日舞台挨拶で、工藤沙織はレッドカーペットで最大の勝者となった。各芸能メディアで、圧倒的な存在感を示す記事が並び、彼女は溜まっていた鬱憤を晴らすことができた。

工藤沙織のスタイリストも、一躍有名になった。芸能界のスターたちは、密かに彼女の今日のスタイリストが誰なのか探り始めた。

しかし、どれだけ探っても、工藤沙織からは何の情報も得られなかった。