第112章 人生の勝者

リビングにて。

高橋夢は鼻を鳴らし、不満げな表情で携帯を投げ出した。「何が大したことないのよ!」

水野日幸はフルーツを盛った皿を持って出てきて、不思議そうに彼女を見た。

高橋夢は心の中で不愉快で、嫉妬に駆られ、水野日幸に愚痴を言い始めた。「日幸ちゃん見て、また話題を買ったのよ。川村染の娘、曽我若菜っていうの。何かデザイン賞を取ったって。まだ芸能界にも入ってないのに、こんなに派手にやって。強引な売り出しは天罰が下るって分かってないのかしら!」

水野日幸はデザインコンテストと聞いて、自分も参加したことを思い出し、気まずそうに「どんな賞を取ったの?」と尋ねた。

「トレンド入りした記事によると銀賞だって。もし金賞だったら、トレンド入りじゃ収まらなくて、天まで上がっちゃうんじゃない?」高橋夢が一番気に入らないのは、毎日お金を使って話題を買い、注目を集める人たちだった。「お金があるからって偉そうにしてさ。私の両親があんなに凄くて、お金持ちで、芸能界にあんなにコネがあったら、言うまでもないけど、私とっくに女優賞を取ってるわよ」

「その通りだね」水野日幸は笑った。

パリ、国際ファッションコンテストの華やかな授賞式が進行中だった。

川村染は最前列のVIP席に座り、完璧なメイクと美しいドレス姿で、東洋美人特有の上品で知的な美しさを漂わせながら、誇らしげにステージの方を見つめていた。

「染さん、おめでとうございます。こんなに優秀なお嬢様を育てられて。私の子供が若菜ちゃんの半分でも出来がよければ満足ですわ」

「染さんは人生の勝ち組ですね。育てたお子様たちは誰一人として並の人じゃない。本当に羨ましいです」

「そうですよ。染さん、育児本でも出版なさったら?私たちに子育ての方法を教えてください。絶対に一番に買いますから」

周りの来賓たちは、日本の芸能界の大物スターたちで、高級ブランドに招待されて来ていた。曽我若菜がステージに上がるのを見て、競うように祝福の言葉を述べ始めた。

工藤沙織は少し離れた場所で、海外のファッション界の重鎮たちと一緒に座っていた。あちらの祝福の声を聞き、川村染の方をちらりと見て、軽蔑的に冷笑した。

たかが銀賞で、調子に乗りすぎじゃない?大したことないわ。中森茜先生なんて、彼女の娘より若いのに、金賞を取ったのよ!