第119章 落ち着かない

一橋渓吾は少女の顔に浮かんだ落胆をはっきりと見た。壁の向こうに、彼女が期待する何かがあるのだろうか。

時間はもう遅くなっていた。高橋夢と一橋渓吾は二人で別れを告げた。

出雲絹代はとても嬉しかった。息子を失ってから、この日にこれほど嬉しく感じたことはなかった。一橋渓吾と高橋夢を玄関まで送り出しながら言った。「一橋くん、夢ちゃん、これからもよく遊びに来てね。おばさんと話し相手になってくれると嬉しいわ」

「はい、おばさん」高橋夢は期待以上の展開に大喜びで、笑いながら言った。「来るなと言われても、厚かましく来ちゃいますよ。うるさがらないでくださいね」

彼女は最初、水野若社長があんなに威厳があって、あんなに冷たく気品があるなら、お母さんもきっと同じように冷たいだろうと思っていた。まさかおばさんがこんなに親しみやすく、人情味のある人だとは思わなかった。本当に素敵な人だった。