第132章 彼は全部好き

水野日幸は顔も服も油だらけで、悔しそうに彼女を見つめた。「お母さん、料理ってどうしてこんなに難しいの？」

出雲絹代は散らかり放題のキッチンと床に落ちた鍋を見て、怪我をしていないことを確認してようやく安心した。さっきまでガス爆発かと思って魂が抜けるほど怖かった。「何も料理なんかしなくていいのに」

そう言いながら、前に進み出て娘の顔を拭いてあげた。心配で叱りたい気持ちもあった。

水野日幸は唇を噛んで、鼻をすすった。「ドラマの視聴率が1%超えたら、お隣さんにご飯を作ってあげるって約束したの」

「あなたったら、料理なんてできないのに。怪我でもしたらどうするの？」出雲絹代は深いため息をついた。

彼女は今でも、隣のおじさんがどんな顔をしているのか見たことがなかったが、娘は随分と気にかけているようだった。