木村勁は色とりどりの可愛い動物型の綿菓子を手に持ち、彼女を一瞥しただけで、完全に無視して立ち去った。
曽我若菜は胸がドキッとし、もう一度呼びかけたが、木村勁が去っていくのを見て、自分に言い訳をした。「人が多すぎて、木村補佐は私に気付かなかったのかもしれない。」
あの木村勁なんて、ただの補佐に過ぎないのに、何様のつもりなの。彼女を無視するなんて、その存在を無視するなんて。
「何よあいつ、ただの補佐じゃない。若菜、後で光輝兄に頼んで首にしてもらいましょう」と田中澪子は憤慨して言った。
「そこまでする必要はないわ」曽我若菜は穏やかな笑みを浮かべながら、心の中では木村勁を憎んでいた。こんなに大勢の前で、面子を潰されて。
光輝兄はあの日、彼女とすごく良い話をしていた。彼女が来ることを知っていれば、きっと会ってくれるはず。あんな補佐なんて、何者でもない。