「寒兄、そんなことを言わないで。全部私が悪いの、妹に申し訳ないことをしてしまって」曽我若菜は柔らかく弱々しい目で彼を見つめ、涙を浮かべながら言った。「彼女を怒らないでくれる?」
「分かった」黒田夜寒は腹に溜まった怒りを抑えながら表面的に返事をしたが、心の中では自分なりの考えがあった。
許すだって?
絶対にありえない!
つぶされた面子は、必ず取り戻さなければならない。
水野日幸が入り口に着いたところで、警備員に止められた。
「お嬢様、招待状をお見せください」警備員は非常に丁重な態度で言った。
水野日幸は有田風を見た。
有田風は首を振った。源社長は招待状をくれていなかった。
誕生日パーティーに来た人々は名家の出身で教養があり、心中不快でも口には出さなかった。
しかし、傲慢な成金もいて、金があれば何でもできると思い込んでいる者たちは、水野日幸たちが時間を取っているのを見て、いらだちを隠せず、明らかな嘲笑を浮かべた。
「警備員さん、何を無駄話してるんですか。招待状がないなら早く追い返せばいいでしょう!」
「招待状もないのに来るなんて、何様のつもり?浅井爺様の誕生日パーティーが誰でも来れると思ってるの?」
「賢明なら自分から帰りなさい。みんなの時間を無駄にしないで」
浅井家の誕生日パーティーは一般人が入れる場所ではない。この二人の服装を見ると、全部合わせても四千円もしないような安物で、よくもこんな恥ずかしい姿で来られたものだ。
水野日幸は周りからの冷ややかな視線と嘲笑を完全に無視し、礼儀正しく落ち着いた様子で警備員に言った。「では浅井爺様に、水野日幸が改めて伺わせていただくとお伝えください」
彼女には浅井家の爺様が招待状を忘れたのか、それとも意図的に彼女を困らせようとしているのか分からなかった。もし後者なら、この商談はなくても構わない。
入場を待っていた一部の来客は、彼女の態度を見て疑問を抱き始めた。少女の服装はブランド物ではないが、この気品は並々ならぬものだ。もしかして本当に何か大物なのではないか?
曽我若菜はずっと冷ややかに様子を見ていたが、水野日幸が帰ろうとするのを見て、急いで善人面で駆け寄り、警備員に説明した。「すみません。彼女は私の妹なんです。招待状は私が持っています。一緒に入らせてください」
黒田夜寒は冷笑を浮かべた。