黄金ホールの中で、観客は全員着席していた。
会場は静かで、皆が期待に胸を膨らませていた。
日本舞踊家協会は、日本舞踊の最高水準を代表している。
ここで観客に披露されるのは、究極の完璧な視覚の饗宴だ。
関口月は既に着席していた。先生と日幸は楽屋で準備中で、彼女は客席から日幸の演技を見たいと思い、先生も同意してくれた。
しかし、予想外だったのは、川村染一家が来ていて、彼女の左側の席に座っていたことだ。
曽我若菜はプログラムを手に持ち、少し困惑した様子で小声で尋ねた。「関口先生、『フラワースピリット』という演目の出演者が書かれていないのですが」
関口月が客席にいるということは、松原白羽が出演するということだろう。
でも、あの足の状態で、どんな舞が踊れるというの?踊ったら、一生不自由になってしまうんじゃないの。