第279章 嗄れた咆哮

人は過度な緊張と混乱状態では、理性と冷静さは存在しない。

彼は警察に通報することも、電話をかけることも忘れ、ただ狂ったように、まるで囚われた獣のように、藤田家から柴田家へ向かう道を、走り回り、走りながら必死に水野日幸の名前を叫び続けた。極度の心配と恐怖で、彼の両目は赤くなっていた。

この悪い子め。

一体どこへ行ったんだ?

途中で何か危険なことに遭遇したんじゃないか?

きっと悪い奴らに連れて行かれたに違いない。

もし悪い奴らに何かされたら、どうすればいいんだ?

なんてうかつだったんだ、なぜちゃんと見ていなかったんだ!

藤田清明は腸が青くなるほど後悔した。全て自分が悪い、もし自分のプライドなんか気にせず、もっと早く柴田家の人に聞いていれば、こんなことにはならなかったのに。