辻緒羽という奴は、辻家の落胤という身分でありながら、権力者が溢れる帝都で、横暴に振る舞い、天に逆らい地に逆らい、黒田夜寒から恋人を奪い取り、曽我時助に屈辱を与え、それでもなお無事に生きているということは、その手腕は並大抵のものではない。
藤田清明は彼女の言葉を全く気にかけず、辻緒羽を危険人物とは思っていなかった。昨日の協力は、情報漏洩以外は非常に満足のいくものだった。
むしろ昨日の協力を通じて、辻緒羽への偏見が少なくなった。確かにうるさい奴だが、義理堅く、兄弟のためなら命を懸ける真の兄弟だ。今後何かあれば、絶対に見過ごすことはないだろう。
藤田家の者は、恨みは必ず報い、恩は必ず返すことを何より重んじている。
水野日幸も知っていた。辻緒羽はとても義理堅い人間で、仲間が困っていれば即座に助けに行くのは当たり前、身内を守ることに関しては特に厳しかった。インターナショナルクラスの誰かが少しでも不当な扱いを受ければ、真っ先に立ち向かっていき、そのためクラスのみんなから尊敬され、心から従っていた。