第369章 知らない

藤田清義は冷たい声で言った。「知らない」

水野日幸は喉に血を詰まらせそうになった。……

よくも知らないなんて!

ほら見ろ、これこそ恩知らずで、都合が悪くなると手のひらを返すってやつだ!

この前天星であんな化け物みたいな姿になっていた時でも一目で分かったくせに、マスクをしただけで分からないだなんて!

藤田清義が美人と話している間に、もう前の方まで来ていた。

美女はアルバムを受け取った後、藤田清義を蹴って、目配せをした。気に入ったなら連絡先を聞けばいいのに!

「行くぞ」藤田清義は言い終わると、すぐに立ち去った。

美女は水野日幸を見て、優しく微笑みながら柔らかい声で言った。「すみません、連絡先を教えていただけませんか?」

水野日幸は「申し訳ありません」と答えた。

美女は彼女の笑みを湛えた目を見つめた。目の奥には冷たさがあり、感情は見られなかったが、どこか不思議な親近感を覚えた。しばらくして我に返り「大丈夫です、お忙しいところすみません、ご苦労様です」