第505章 練習生に事故が起きた

藤原遥も多少は聞いていた。藤田スターは夕子先生のために来たのだと。最初は疑わしく思っていたが、目の前の状況を見て、間違いないと確信した。プレゼントまで届けられたのだから。

とはいえ、自分にもファンがいるし、自分も誰かのアイドルなのだから、失礼にも他人のプレゼントの中身を詮索したりはしない。

景山昱が物を届けた後、すぐに辞去した。

水野日幸は心の中でだいたい予想がついていたが、寮に戻って中身を見た時、思わず胸を叩きたくなった。

ギフトバッグの中身は他でもない、鎮痛剤と黒糖だった！

彼女が完璧だと思っていた計画は、そこまで完璧ではなかったようだ。名医の九州として藤田家を訪れた時から、彼は既に彼女の正体に気付いていたのではないかとさえ疑っている。

さすが藤田家の人々だ。藤田清義のあの鋭い目は言うまでもなく、一目で彼女を見抜いてしまう。藤田清輝も負けていない。若旦那だけが少し抜けているが、それも相対的な話だ。

普段の若旦那の振る舞いを見ていると、とても上品なのだが、彼女の前では少し短気で、少し抜けていて、少し子供っぽくなる。

水野日幸は鎮痛剤と黒糖を見つめながら、携帯電話を取り出し、藤田清輝の電話番号を表示させた。しばらく見つめた後、結局かけることはせずに諦めた。大したことではないだろう。

人から聞いた話では、藤田清輝は神秘的なゲストとして明日番組に登場する予定だったが、急用で離れなければならなくなり、今日に変更になって、指導者や練習生たちと交流したのだという。

携帯電話をまだ手に持っているうちに、外から慌ただしい足音が聞こえ、誰かが彼女のドアをノックして、練習生が事故に遭ったと告げた。

水野日幸は携帯電話を持ったまま外に出た。

谷川陽が彼女のドアの前で言った。「練習生が事故に遭いました。私たちと一緒に見に行きませんか？」

彼は夕子先生がこういうことは得意ではないことを知っていたが、せっかく来たのだから、形だけでも見に行った方がいいと思った。

水野日幸：「誰？」

谷川陽は首を振った：「曽我若菜ともう一人です。詳しくはわかりませんが、階段から転げ落ちたそうです。」

水野日幸はここまで聞いて、少し状況が分かってきた。曽我若菜ともう一人というのは、きっと彼女と仲の良い親友だろう。

他の指導者たちも知らせを受けて、集まってきた。