第552章 ママがやっと見つけたわ

出雲絹代の動きは、あまりにも速く、突然すぎて、スタッフはもちろん、彼女の隣に立っていた田中翔太と数人のファンも反応できなかった。

撮影現場のスタッフが部外者の立ち入りを止めようとした時には、彼女はすでに現場に駆け込んでいた。

出雲絹代はよろめきながら走り寄り、一橋渓吾の前に片膝をつき、涙が止めどなく流れ、激しく嗚咽を漏らし、体が震えていた。

水野日幸はその場で凍りついたように立ち尽くし、無意識に血まみれの一橋渓吾を見て本物だと思い込み、慌てて説明した。「お母さん、大丈夫だよ、これは偽物だよ、血は全部偽物なんだ。」

しかし考え直してみれば、そんなはずはない。母が演技というものを知らないはずがなく、撮影中に飛び込んでくるはずがない。

一橋渓吾もこの時驚いていた。悲しそうに泣き、赤く腫れた目で彼の胸を見つめ、何か言いたそうにしているのに言葉が出てこない出雲絹代を見て、心配になり、戸惑った。「おばさん、どうされましたか?」

出雲絹代は何も言わず、ただ呆然と彼の胸のその部分を見つめ、震える手を伸ばしてそこに触れようとしたが、突然止まり、喉から嗄れた嗚咽を漏らした。

周りの人々は、彼女の手の方向に目を向け、一橋渓吾の胸の部分に血の他に何か違うものがあることに気づいた。色が暗く、間違いなくそれは母斑のようだった。

しかし、遠くからでは母斑の色や形は見えなかった。

他の人には見えなくても、傍にいた水野日幸ははっきりと見えた。その母斑は赤色で、血に覆われているため胸の肌と比べて色が暗く見え、まさに鳥が飛んでいるような形をしていた。

彼女の頭の中で轟音が鳴り響き、信じられない様子で目を見開いて一橋渓吾を見つめ、声さえ震えていた。「あなたなの。」

一橋渓吾が最も困惑していた。出雲絹代がなぜこうなったのか、水野日幸のその言葉が何を意味するのか分からず、焦って目が赤くなっていた。

水野日幸は確信が持てず、母が間違えているのではないか、自分が間違えているのではないかと恐れ、近くにあった服を取り、一橋渓吾の腕を掴んで、力を込めて彼の胸の血を拭い始めた。