第552章 ママがやっと見つけたわ

出雲絹代の動きは、あまりにも速く、突然すぎて、スタッフはもちろん、彼女の隣に立っていた田中翔太と数人のファンも反応できなかった。

撮影現場のスタッフが部外者の立ち入りを止めようとした時には、彼女はすでに現場に駆け込んでいた。

出雲絹代はよろめきながら走り寄り、一橋渓吾の前に片膝をつき、涙が止めどなく流れ、激しく嗚咽を漏らし、体が震えていた。

水野日幸はその場で凍りついたように立ち尽くし、無意識に血まみれの一橋渓吾を見て本物だと思い込み、慌てて説明した。「お母さん、大丈夫だよ、これは偽物だよ、血は全部偽物なんだ。」

しかし考え直してみれば、そんなはずはない。母が演技というものを知らないはずがなく、撮影中に飛び込んでくるはずがない。

一橋渓吾もこの時驚いていた。悲しそうに泣き、赤く腫れた目で彼の胸を見つめ、何か言いたそうにしているのに言葉が出てこない出雲絹代を見て、心配になり、戸惑った。「おばさん、どうされましたか?」