第589章 本当に、彼女を学校まで送りたい

長谷川深は今でも、美美とは親しくなく、呼びかけても反応しないほどだった。

「日幸」長谷川深はソファーに伏せている少女を見て、一声呼びかけたが、返事はなく、近づいて見ると、すでに眠っていた。

彼は慎重に彼女を仰向けにし、薄い毛布をかけてやった。眠っている少女を見つめる彼の目には愛情が溢れ、ただこうして静かに見つめているだけで、永遠に飽きることはないと感じていた。

「ボス!」葛生がリビングに入ってきて、水野日幸が見当たらず、家にいないと思い、声が大きくなってしまった。

長谷川深は不機嫌な警告の眼差しを向けた。

葛生は背筋が凍る思いをし、改めて見ると水野日幸がソファーで眠っているのに気づき、そっと近づいて手持ちの書類を彼に渡した。

水野お嬢様がボスの治療を始めてから、ボスの体調は日に日に良くなっていった。彼は本当に、このままずっと続いて、ボスが完治し、ボスが立ち上がれるようになることを願っていた。

長谷川深は書類を受け取り、彼を下がらせた。書類に目を通しながら、彼女の傍らにいた。

水野日幸が目を開けた時、向かいで真剣に仕事をしている男性を見つめ、ぼんやりと見つめたまま、声も出さず、ただ見れば見るほど魅力的で、見れば見るほど嬉しくなり、いくら見ても見飽きることがなかった。

長谷川深はとっくに少女が目覚めていることに気づいていた。熱い視線に心臓の鼓動が速くなり、軽く咳払いをして彼女を見た。「目が覚めた?」

水野日幸は頷き、横向きに寝そべったまま、だらしなく頭を手で支えて:「お兄さん、軍事訓練期間中は帰宅できないし、自衛隊基地から勝手に離れることもできないから、会えなくなっちゃうね。」

彼女の大学の軍事訓練は、帝京の自衛隊基地で行われ、食事も宿泊も基地内で、入隊した自衛官と同じような厳しい訓練を受けることになっていた。

「うん」長谷川深は低く応えた。寂しくないと言えば嘘になる。少女が毎日朝晩笑顔で挨拶してくれなくなること、毎日彼女に会えなくなることを考えると、息が詰まるほど辛かった。

水野日幸は男性が突然書類を強く握りしめた手をはっきりと見て、続けた:「一ヶ月もお兄さんに会えないけど、私のこと思い出してくれる?」